大型の`16|は30日未明から午後にかけて県内を直撃、つめ跡を残して縦断した。 山間部の累積雨量は最大で600ミリに達し、土砂災害の危険性は台風が過ぎた後も依然強まっている。 一方、大潮と重なった影響で高潮が懸念された沿岸部や、増水した球磨川流域では、大勢の住民が避難を余儀なくされ、不安な一日を過ごした。 交通機関も寸断され、多くの県民の足に影響が出た。 【井上秀人、石川淳一、新里啓一】 ■山間部豪雨 台風の接近と同時に球磨郡、蘇陽町、清和村など県内陸の山間部で豪雨となり、県などは土砂災害への警戒を呼び掛けている。 29日の降り始めから30日午後4時までの総雨量は、いずれも球磨川水系の水上村千ケ平600ミリ▽同村湯山546ミリ▽泉村開持485ミリなど。 また1時間の最大雨量は水上村千ケ平64ミリ▽一の宮町仙酔峡56ミリ▽五木村五木53ミリなどとなった。 河川も増水し、球磨川や川辺川などで警戒水位を大幅に上回った。 同4時現在、球磨川は球磨村の渡、大野の両観測所で警戒水位を4メートル前後上回ったほか、人吉市でも洪水の恐れのある危険水位を上回った。 ■被害 県災害情報連絡本部の午後4時現在のまとめによると、けが人は湯前町の道路崩落で車ごと転落した2人を含む重傷1人、軽傷5人の計6人。 住宅は山鹿市、産山村など3市村で3棟が屋根の損壊など一部破損の被害を受けた。 また、芦北町で6世帯が床上浸水したほか、新和町などで5世帯が床下浸水した。 ■避難 27市町村で災害対策本部が設置され、高潮被害が懸念された沿岸部を中心に、8市町村で3480世帯、9738人に避難勧告が出た。 勧告が出たのは、不知火町▽松橋町▽宇土市▽矢部町▽相良村▽湯前町▽清和村▽人吉市。 また69市町村で1793世帯、3717人が付近の公共施設などに自主避難した。 球磨川の増水で避難勧告が出た人吉市の避難所となった人吉二中には午後4時ごろから市民らが、タオルや衣類、食べ物などを詰めた袋を持って、不安げな表情で集まってきた。 家族で避難してきた主婦(68)は「テレビを見ていてえらいこっちゃと思った。 おにぎりを五つほど握って出てきた。 結婚して45年たつが、こんなことは初めて。 家が無事ならいいんですけど」と表情を曇らせた。 農業の男性(66)は「増水は何回か見てきたが、避難勧告は初めて。 水があふれてこないか心配です」と話していた。 ■交通 `16|の影響で県内の交通機関もマヒした。 jr九州では鹿児島線、豊肥線、三角線、肥薩線の県内全線で上下線ともに始発から運休となり、午後6時現在で復旧のめどは立っていない。 南阿蘇鉄道とくま川鉄道も始発から運転を順次見合わせた。 空の便も熊本空港離発着の便は各路線とも始発から軒並み欠航となったが、夕方から一部の便は運航を再開。 フェリーは29日に続いてすべての主要航路で全便運休となった。 高速道路は午前4時45分に九州自動車道の八代―えびの両ic間、南九州自動車道の八代jct―日奈久ic間で通行止めとなり、台風の北上とともに規制区間も拡大。 正午すぎには九州自動車道の植木―八女両ic間まで規制が延長され、県内全線で通行止めになった。 国道と県道、主要地方道でも土砂崩れや倒木などが相次ぎ、高森町草部の国道325号や本渡市の瀬戸大橋付近の国道266号など一時41路線48区間で車の乗り入れが規制された。 ■停電 九州電力熊本支店によると、未明から強風により電線が切れるなどして停電が相次ぎ、午後4時現在で最大の7400世帯が停電した。 ■農林水産 阿蘇、球磨地方を中心に、水稲やホウレンソウの倒伏被害などが出ている。 ビニールハウス破損などもあり、県が被害実態を調べている。 また、有明町のクルマエビ養殖場で築堤が決壊し、エビが流出したとの情報も入った。 また、九州農政局は30日、伊丹光則局長を本部長とする災害対策本部を設置した。 農作物被害の情報収集や現地調査で状況把握を急ぎ、災害対策を講じていく方針。 ■観光 交通マヒの影響で、県内全域11の宿泊施設で約2000人のキャンセルがあった。 また久木野村など八つの観光施設で屋根の破損などの被害が出ている。 8月31日朝刊 (毎日新聞) -