◇交通網ストップ 長崎市付近に7日午前9時半ごろ上陸した`18|は、県内で猛威をふるった。 長崎海洋気象台によると、県内への台風上陸は7年ぶり。 一時は壱岐、対馬を除く県内が風速25メートル以上の暴風域に包まれ、雲仙岳で最大瞬間風速53・2メートルを観測、長崎市でも41・9メートルを記録した。 けが人が相次ぎ、交通機関はストップ。 各地の繁華街もひっそりと静まり返った。 【松本光央、岩井香寿美】 ◇トラックも横転、突風にけが人続出 佐世保市黒髪町のバス停付近で、歩いていた女性(79)が突風を受けて転倒し、大たい骨骨折の重傷。 諌早市小野島町では、自宅車庫の屋根を修理していた男性(47)が強風にあおられ約3メートル下の地面に落下、指の骨を折るなど大けがをした。 長崎市賑町の鮮魚店でもシャッターを修理していた男性(60)の頭にひさしが落下してけが。 同市かき道では自宅玄関で女性(55)が強風で倒れ肩に打撲などを負った。 また、有明町湯江の町立湯江小学校では、職員(52)が被害を調べるために校舎を巡回中、突風で廊下の窓ガラスが割れて顔などにけがをした。 一方、野母崎町の国道499号では、突風にあおられて3トントラックが横転し、運転していた男性(49)が左ひじに擦り傷などを負った。 このほか、長崎市で5人、諌早市で3人、東彼杵町で1人の計9人も、自宅で割れたガラスなどによりけがをした。 ◇交通機関、復旧遅れ 長崎市や佐世保市など各地で市民の足となっている路線バスや路面電車は、始発から運行を見合わせた。 長崎市で路面電車を走らせている長崎電気軌道が運行を見合わせたのは13年ぶりという。 昼過ぎから風雨が落ち着き始めたことから、路面電車や長崎、佐世保両市内を走る路線バスは徐々に通常通りの運行を始めた。 だが、高速道路の通行止めが続いたため、遠距離を走る急行バスなどの復旧は遅れた。 また、空の便も朝から欠航が相次いだが、夕方から東京、大阪行きなどを中心に飛び始めた。 一方、船の便は回復に時間がかかり、長崎―福江、茂木―富岡、佐世保―上五島のフェリーなど大半の便が終日欠航した。 島原―熊本にフェリーを走らせる九商フェリーは「割り当てられた船の避難場所が遠いので、8日もいつになるか……」と運転再開の見通しが立たず困っていた。 ◇自主避難3118人、停電12万1600戸 台風の接近に備え、長崎市柳田町の土井首地区公民館には6日夕から住民が自主避難し始め、同日午後10時ごろには124人に膨れ上がった。 近くの主婦(73)は今回の台風が91年の19号と似ていると聞き、危険を感じて夫(80)と避難してきた。 「19号の時はガラスも割れて瓦も飛んでひどかった。 ここは安心できますが台風はやっぱり恐い。 早く通り過ぎてほしい」と話していた。 県災害警戒本部によると、自主避難は7日午後1時現在の1993世帯3118人をピークに、風が収まった地域から、帰宅していったという。 また、九州電力長崎支店によると、壱岐、対馬を除き、県内で最大12万1600戸が停電(7日正午現在)した。 風の状況などをみて順次復旧作業に入っている。 ◇繁華街もひっそり 台風上陸直後とみられる午前9時半過ぎの長崎市。 いつもは交通量が多いjr長崎駅周辺の道路も車はまばらで、路上に散乱した折れた木の枝葉や空き缶などが、風が吹き抜けるたびに舞い上がっていた。 駅近くのガソリンスタンド店員は「日中でこんなに車が少ないことはない」と話した。 市中心部の繁華街も人影はほとんどなく、時折吹く突風に傘を差すのをあきらめてずぶ濡れになって歩く人の姿も見られた。 アーケード街はシャッターを下ろして営業を見送る店がほとんど。 ファーストフード店の男性店員(24)は「交通機関が動かず、他の店員が出勤できない。 いつ店を開けられるか……」と途方に暮れていた。 ◇米軍は基地閉鎖、海自艦沖泊まり 米海軍佐世保基地は台風の影響で基地内を全面封鎖した。 また、海自佐世保基地は波にもまれた艦船が岸壁に接触するのを防ぐため、係留中の艦船を出航させ、港内で沖泊まりさせた。 ◇空き家全壊や漁船2隻沈没 長崎市竹の久保町の県立長崎西高校(石井勝典校長)では、第2体育館のトタン屋根の一部が強風で吹き飛ばされた。 同校などによると、体育館は床面積1071平方メートルで、屋根の約8分の1くらいがめくれ上がり、隣接するグラウンドに落下した。 台風接近により休校だったため、けが人はいなかった。 また、時津町では大型スーパーの倉庫用テントが風で支柱を数本つけたまま転がり、約30メートル離れた民家のブロック塀を壊して付近にあった造園用の植木約20本を折るなどした。 三和町では強風により空き家が全壊した。 諌早市有喜町の漁港では高波で防波堤(全長180メートル)が岸壁の付け根部分から約100メートルにわたって倒壊。 千々石町の漁港では係留中の漁船1隻が転覆、漁船1隻と遊漁船1隻が沈没した。 ◇ウミネコが飛来−−世知原中 世知原町の世知原中学校のグラウンドに、約300羽のウミネコが台風を避けるように飛来した。 佐世保市の佐世保港などから来たとみられ、山を越えて約15キロ。 ウミネコの生態に詳しい大阪市立大の高木昌興講師(37)は「台風回避のために川を遡上する例はあるが、山を越えての移動は極めて珍しい。 先頭のウミネコが風にあおられてコースを誤り、一団で山を越えてしまったのではないか」とみる。 同中の小井川稔教頭(51)によると、ウミネコの群れは、学校にいた教諭が午前10時ごろ見つけた。 風雨が弱まった午後3時ごろから徐々に飛び立ったという。 あいにく台風のため休校。 小井川教頭は「子供に見せてあげたかった」と残念そうに話した。 【倉岡一樹】 9月8日朝刊 (毎日新聞) -