県内のほぼ全市町村を論議の渦に巻き込んだ「平成の大合併」は、いよいよ大詰めだ。 来年1月1日の新大分市、新臼杵市の誕生を皮切りに、続々と新市が誕生する予定。 来年3月末までに知事に合併申請した上で、06年3月末までに合併すれば合併特例法の恩恵に浴するが、タイムリミットが迫る。 9地域が既に合併を申請し、これらだけでも現行の58市町村が25市町村に減る算段だ。 県内初の合併協議会(法定)が佐伯南郡で立ち上がった02年5月以降、県内各地で合併協議が深まる一方で、吹き出した地域間対立や生じた埋めがたい溝。 最終盤に差しかかった現状や経過を報告する。 【藤原弘】 ◆苦渋の選択、変則議員数−−妙手か1年後「77議席」を「46」に ◇中津下毛(中津市、三光村、本耶馬渓、耶馬渓、山国町) 「定数特例」を主張する中津市と「在任特例」の4町村が議員定数でせめぎ合った。 法定の合併協は最後の最後に「二つの議席数という妙手」を繰り出した。 現中津市議(26人)の任期は07年5月。 「下毛郡の4町村議51人(三光村14、耶馬渓町13、本耶馬渓町12、山国町12)は合併時に全員新市議とする。 ただし合併1年後(06年3月1日)から各町村議を5人とする」という協定書を結んだ。 1年間だけ「77議席」で2年目から旧4町村議の新市議は、5人を残して自主退職し新市議の議席を「46」に減らす。 井ノ口邦彦・中津市議会議長は「妥協の産物」と苦渋の選択だったと打ち明ける。 協定書だけでは心細い合併協は「守れなかった場合、けじめとして全議員が辞職する」という誓約書まで出させた。 しかし、残る議員と去る議員の線引きは容易ではない。 小座本要・耶馬渓町議は「自ら辞めることは町民への背信行為」と誓約書への署名を拒否した。 小野和彦・本耶馬渓町長は「校区ごとに選ぶのが最良ではないか。 あとは良識の問題だ」と楽観的だ。 【大漉実知朗】 ◆安心院町の反対論押し切る ◇宇佐両院(宇佐市、安心院、院内町) もともと、3市町は宇佐郡だけに元のさやに戻ったというのが住民の実感ではないか。 議員定数も在任特例を選択、合併直後の定数は56。 県議会(定数46)や大分市議会(同48)も上回る規模。 グリーンツーリズム(gt)を進める安心院町で反対論があったが、押し切られた。 【大漉実知朗】 ◆新市名称に、真玉など反発 ◇西高(豊後高田市、真玉、香々地町) 新しくなる県内の市で、人口をみると最少の合併。 当初、大田村も合併研究協議会のメンバーだったが、任意協には加わらなかった。 しかし、新市名が「豊後高田市」になることに真玉、香々地両町が反発。 公募の結果、「豊後高田」が多数を占め、あきらめた。 【大漉実知朗】 ◆庁舎問題が再燃気配、実現へ難航局面も−−4町1村合併 ◇東国東(国見町、姫島村、国東、武蔵、安岐町) 合併協議は庁舎位置の決定や相次ぐ台風襲来で遅れたが、「国東と、くにさきで意見が分かれて審議中の新市名」「定数を26以下とした議員の取り扱い」「職員の身分の取り扱い」「新市計画」を残すのみとなった。 でも、難航が予想されるものが多く、05年3月に合併調印、他地域より1年遅れの合併となりそうだ。 合併へ最大の関門は姫島村の職員の取り扱い。 村民の人口約2700人のうち12人に1人が公務員。 村には大きな産業がなく、「合併は人口が減る」という声が強い。 そのまま新市に移行すると、現村職員給与が大幅に引き上がるため他町から効果を危ぶむ声も。 良好な基金や離島債を背景に村が単独を選択、4町合併で終わることもありえる。 「新庁舎建設時は国道213号沿いに置く」「新庁舎建設までは本庁舎は国東町」とあいまいにした庁舎協議も火種が残る。 国東町を望む国見、国東町と武蔵町を望む武蔵、安岐町で対立した結果だ。 新市財政状況から新庁舎建設が疑問視される心配もある。 総合庁舎方式を選択する見込みで、庁舎問題が再燃しそうな気配も捨てきれない。 【杉山恵一】 ◆日出町離脱で難航続き−−1市1村合併の可能性も−−杵築と大田 ◇杵築速見大田(杵築市、日出、山香町、大田村) 4市町村の協議が2度中断。 日出町離脱でスタートするはずだった3市町村の協議も、山香町議会の否決で出はなをくじかれ難航。 05年3月までに3市町村で知事に合併申請できるか、どうかの瀬戸際だ。 まず、当初の4市町村協議は杵築市と日出町が庁舎位置、新市名を巡って綱引き。 「新市名・杵築市」「本庁舎・日出町」で合併調印にこぎつけたが、「速見市」を望んだ日出町議会が猛反発。 合併関連の全議案を否決し本田維憲町長(当時)の辞職に発展した。 町長選が事実上の住民投票となった。 その結果、新市名での合併反対を訴えた工藤義見町長が当選、4市町村合併は消えた。 これを受け、杵築市、山香町、大田村の3市町村は日出町の離脱を10月の協議会で承認。 3市町村の合併を実現するため、3市町村が11月に同一歩調で議会を開き、「合併協議の規約を改正」して協議開始に臨んだ。 ところが、山香町議会が「4市町村と3市町村では合併効果が違う。 いったん解散すべき」として「規約改正議案」を否決した。 3市町村の合併協議で鍵を握るのは、やはり山香町。 議員には「速見郡として行動を共にした日出町と合併したい」という声が根強く、町執行部が議会にてこずると杵築市と大田村の1市1村合併に終わる可能性も。 町単独を選択した日出町は、町の事業内容や職員給与などの支出を見直し、財政を身軽にして乗り切りたい考えだ。 【杉山恵一】 ◆再協議の動きなく…「単独」、玖珠町も苦渋の決断 ◇玖珠九重(玖珠町、九重町) 「(単独路線で走り出した九重町と)合併したくてもできず、うちも単独で行かざるを得ない」と苦渋の選択にぼやき顔の小林公明・玖珠町長。 メンツもある。 「もう、こちらから再協議の働きかけはしない」と断言、「12月定例町議会で合併断念と独自のまちづくり施策を表明したい」とふっきれたように話す。 見合いの相手が嫌といえば、必然的に選択の余地がない2町合併。 「単独生き残り」を掲げる坂本和昭・九重町長が7月の前倒し選挙で無投票4選、10月の任期満了選挙で5選した。 「法定期限ギリギリまで努力する」と望みをつないだ小林町長も年の暮れが迫り、経過措置で認められた「3月末までの議決・知事申請」も物理的に不可能、と判断した。 九重町総務課に今月1日、自律推進係がお目見えした。 事業見直し、民間活力導入、業務の外務委託などを検討し、自立のための財政計画案を策定。 来春から自律推進室に昇格する。 また「身の丈に合ったまちづくり」(坂本町長)の憲法「まちづくり基本条例」を12月定例議会に提案、町制施行50周年の来年2月から施行させる方針だ。 一方の玖珠町。 「町民と行政の協働による地域づくり」「財政赤字転落の回避」「職員の意識改革と人材育成」などを柱とする行財政改革プラン(05年度から緊急4カ年計画)を策定し、12月定例議会に報告する方針。 小林町長は「行政サービスを維持しながら行財政運営をする自信があります」。 【楢原義則】 ◆全協議の8割合意、来年1月の決着目指す ◇日田市郡(日田市、前津江、中津江、上津江村、大山、天瀬町) 「運命共同体として市郡の相互理解を深め、新市づくりに協力したい」(9月5日の合併協定調印で郡部代表)と、予定から半年遅れて合意した日田市郡。 来年3月22日の新日田市スタートに向け、54分科会で約2500もの調整項目を協議。 その8割が合意(条例・規則関係は5割)に達し、来年1月末までにすべて決着させる方針だ。 遅れた原因は議員定数問題。 定数特例(5町村のみ計8人の増員選挙)の日田市に対し、郡部は市議と同数(26人)程度の変則在任特例を主張して対立。 郡部が折れた。 町議の一人は「増員選挙出馬は、議員間で互いに様子見といったところ。 それよりも今は、協議の行方を最後まで見届けるのが責務」と話していた。 【楢原義則】 【市町村合併一覧表(県北部)】 地域名 新市名 人口 合併期日 中津下毛 中津市 85617 3.1 宇佐両院 宇佐市 62349 3.31 西高 豊後高田市 26206 3.31 東国東郡 ― 38186 ― 日田市郡 日田市 77369 3.22 杵築速見大田 日出町合併協離脱表明 玖珠九重 九重町が単独を表明 ※人口は00年の国勢調査の合算。 合併期日の月日はいずれも05年。 ―は確定していないことを示す。 11月25日朝刊 (毎日新聞) -