第44回衆院選は11日投票、即日開票された。 「郵政」をめぐる自民の分裂区では、3区が郵政民営化法案賛成の自民前職、5区は反対の無所属前職がそれぞれ当選し、明暗を分けた。 1、4区は自民が議席を守った。 2区は民主推薦の無所属新人が制した。 民主は3候補を擁立し政権交代を訴えたが、自民分裂騒動に埋没気味で、今回も選挙区での議席獲得はならなかった。 小選挙区の当日有権者数は141万6803人。 投票率は69・69%だった。 ◆3区 ◇宮路さん、6選果たす 松下さん、分裂戦に敗れる 当選の報が入ると、日置市伊集院町の宮路和明さんの選挙事務所には、「バンザーイ」「やったぁ」の声が入り交じり、6選を祝う大きな拍手が繰り返し沸き起こった。 「挑まれた天下分け目の、関ケ原の戦い」。 今回は今までにない苦しい選挙戦だった。 相手はかつて、比例代表と小選挙区で交互に出馬する「コスタリカ方式」で共存関係にあった無所属前職、松下忠洋さん。 松下さんが郵政民営化法案に反対したことで、まさかの分裂選挙に突入した。 そこに民主新人、野間健さんも加わった。 小学校区単位に張り巡らせた約220の後援会組織もあり、地盤は固かった。 だが、比例重複を辞退。 復活当選の道を自ら閉ざし、小選挙区制導入以来、約10年ぶりの街頭演説に踏みきった。 応援では、安倍晋三幹事長代理や森喜朗前首相らが相次いで鹿児島入りするなど、党公認ならではの組織戦を展開した。 「郵政民営化は改革の突破口。 改革を進めるのか、それとも後退させて日本の沈没を招くのか」。 当初から民営化支持の立場を貫き、党離島振興委員長の立場から「田舎の郵便局は最大2兆円の基金や法律で担保している」と説いて回った。 一方で、県農政連や医師連盟の推薦も取り付け「勝つだけでは足りない。 圧勝を」と訴え、町村部を中心に支持を広げた。 【松谷譲二】 宮路和明(みやじ・かずあき) 64 自[森]前(6) 党総括副幹事長・離島振興委員長[歴]群馬県農政部次長▽農水省大臣官房参事官・畜産総合対策室長▽総務政務次官▽党国対副委員長▽農水委員長▽党団体総局長・組織本部長代理▽副厚労相▽東大 ◆1区 ◇保岡さん、貫禄の11選 川内さん、追い風吹かず 保岡興治さんの当選が決まると、鹿児島市高麗町の選挙事務所は大きな歓声と拍手に包まれた。 選挙期間中、陣営では「マイナス要素ばかり」という嘆きがあちこちから聞こえていた。 民営化賛成による郵政関係者の反発、県医師連盟の「自主投票」、一部の建設業者などの離反――。 従来の支持層にほころびが生じていた。 事実上の一騎打ちとなった民主前職、川内博史さんが「選挙区での初勝利」を掲げ、激しく追い上げる中、陣営は危機感をむき出しにしていた。 “政策通 として国政の場で力を発揮する一方、「地元で顔が見えない」という印象が一部で広がっていた。 今回、保岡さんは「鹿児島の陳情は全部私が仕切っている」と集会などで声を張り上げ、地元への貢献を強くアピールした。 今回初めて保岡さん自身が幹線道路などに立ち、通勤の車などに赤いtシャツ姿で手を振った。 本人が「何年ぶりか分からない」と語る朝のつじ立ちに、陣営の危機感の強さがにじんでいた。 個人演説会には県議や市議をフル動員。 陣営は精力的に企業、団体を回った。 「郵政民営化の賛否を決める選挙」と訴え「改革派」を前面に打ち出し、無党派層の取り込みも狙った。 危機感をバネに11回目の当選を果たし、保岡さんは深々と支持者に頭を下げた。 【河津啓介】 保岡興治(やすおか・おきはる) 66 自[山]前(11) 弁護士▽党憲法調査会長・国家戦略本部事務総長・新憲法起草委事務局長[歴]鹿児島地裁裁判官▽国土・大蔵政務次官▽建設委員長▽党副幹事長・政調総括副会長▽法相▽憲法調査会幹事▽中大=[公]w ◆2区 ◇徳田さん、混戦を制す 園田さん、雪辱ならず 徳田毅さんが自民元職の園田修光さん、無所属新人の打越明司さんとの三つどもえの激戦を制した。 鹿児島市和田1の事務所は、初当選を喜ぶ支持者たちの拍手と歓声に包まれた。 徳田さんは先月9日、4期務めた自由連合代表の父虎雄さん(67)の後継として出馬表明。 約1カ月の選挙戦で、国会の長期欠席が続いた父からの世襲に批判も予想されたが、「地方の論理を国政に反映させたい」とする訴えが、地盤の奄美を中心に支持を広げた。 無所属、民主推薦での立候補を決めてからは、郵政民営化のみを争点にする小泉政権を批判。 行財政改革の必要性を強調しながら、重視する政策として景気回復、財政再建、社会保障制度改革の三つを掲げ「地方や弱者の切り捨てを許してはいけない」と訴え続けた。 支持母体の自由連合が組織戦の核となり、民主と連合鹿児島が側面からサポート。 都市部を中心に民主支持層をまとめ、協力関係を保つ公明支持層も多く取り込んだ。 無党派層が多い鹿児島市谷山地区では34歳という若さを前面に出して知名度不足をカバー。 幅広い年代で支持を集め、「小泉人気」で猛追する園田さんらを振り切った。 徳田さんは支持者や家族と喜びを分かち合い、「父が掲げた『弱者のための政治』を実現していく」と抱負を語った。 【内田久光】 徳田毅(とくだ・たけし) 34無 新(1) 中間法人徳洲会理事▽商社社長[歴]衆院議員秘書▽鹿児島高=[民] ◆4区 ◇小里さん、初当選−−地盤がっちり 「ありがとうございます」。 隼人町内の小里泰弘さんの事務所に当選確実の報が入ると、詰め掛けた支持者を前に小里さんは長身を折り曲げ、深々と礼をした。 父で前職の小里貞利元総務庁長官と4度戦った民主元職の浜田健一さんを制しての初当選に、喜びの拍手は鳴りやまなかった。 突然の解散、突然の世代交代だった。 解散翌日の夜、貞利さんが急きょ会見して引退を表明。 支持者からの推薦という形で、秘書だった小里さんの出馬が決まった。 小里さんは父から引き継いだ強固な後援会組織を基盤に選挙活動。 “二世候補 への反発も予想されたが、逆に46歳の「若さ」を前面に出して新鮮さをアピール。 貞利さんがこまめに支持者を回ったり、小里派の谷垣禎一財務相を4カ所の決起集会に同行させるなど、親子の二人三脚で選挙戦を戦った。 唯一の課題は、新人候補につきものの顔と名前の浸透。 陣営は、他選挙区の自民系候補とは異なり、谷垣財務相以外の応援は要請せずに候補者自身をアピール。 演説内容も「構造改革」一本に絞り、本人を前面に押し出す作戦を取った。 一方、農政連や医師会などの団体も小里さんへの推薦で一致、選挙を後押しした。 最終的には、父親の時代にはなかった若い世代にも支持を広げ、盤石の組織戦を展開した。 【高橋咲子】 小里泰弘(おざと・やすひろ) 46 自[小]新(1) [元]衆院議員秘書[歴]野村証券社員▽労相秘書官・北海道沖縄開発庁長官秘書官・震災担当相秘書官・総務庁長官秘書官▽慶大=[公]w ◆5区 ◇森山さん、組織戦奏功−−米さんの追走許さず 郵政民営化法案に反対して自民公認に漏れ、無所属で出馬した森山裕さんが、同党本部の対抗馬として立った新人の米正剛さんと、国政挑戦4回目の共産新人、柴立俊明さんを退けた。 「当選はみなさんのお陰です。 苦しい戦いだった」。 歓喜の渦に包まれる事務所で森山さんは深々と頭を下げた。 森山さんは、自民分裂で党本部と支部組織がねじれた選挙となる中、参院時代からの実績をアピール。 「今の郵政民営化法案では地方を守れない」と唱え、民主支持層などにも支持を広げた。 無所属の森山さんを支えたのは、従来の支部や党友好団体。 推薦状は2000枚を超え、農政連や建設業界など区内の主だった団体は「5区の自民党は森山さん」と組織をフル稼働。 2度の総決起大会はいずれも1000人以上を集め、組織力を誇示。 公示後、選挙カーで延べ3500キロを走破し、首長・町議選並みのミニ集会、つじ立ちで逆境をはね返した。 一方、03年に続く出馬の米さんは自民公認を弾みに再挑戦。 組織力の森山さんに対抗して草の根の戦いを展開した。 自民党の看板を前面に出し、中盤戦以降、武部勤・党幹事長らの来援で追い上げたが、及ばなかった。 柴立さんは、年金問題や増税反対などを訴えたが、自民分裂のはざ間に埋没した。 【新開良一】 森山裕(もりやま・ひろし) 60 無[反]前(2) [元]財務政務官[歴]鹿児島市議7期・議長▽九州市議会議長会長▽参院外交防衛委員▽自民党参院国対副委員長▽参院議院運営委理事▽自民党奄美振興委副委員長・水産専任部会長▽総務委理事▽日新高 ……………………………………………………………………………………………………… ◆郵政民営化と衆院解散、総選挙の経過◆ 6月27日 鹿児島市で郵政民営化反対集会。 超党派県議らが野田聖子元郵政相を招き、伊藤祐一郎知事も出席 県選出国会議員では、保岡興治、松下忠洋、森山裕、野村哲郎の自民3氏と、民主の川内博史氏が参加 7月5日 郵政民営化法案が5票差で衆院可決 県選出議員では、松下、森山、川内の3氏が反対 6日 県議会が郵政民営化反対の意見書を賛成多数で可決。 公明が反対 16日 自民が県連大会で新執行部発足 空白の2区は支部長(候補)を決められず 31日 「郵便局ファンの会」が鹿児島市で法案反対集会。 松下、森山、川内の3氏が参加 8月6日 社民県連が浜田健一氏の県連代表辞任届を受理 8日 衆院解散 郵政民営化法案が参院で否決 県選出議員では、野村哲郎氏が棄権、加治屋義人氏が賛成 徳田虎雄自由連合代表が政界引退を表明 9日 小里貞利元総務庁長官が政界引退を表明 11日 自民党県連が郵政反対の2氏を含め8人の公認を党本部に上申、分裂選挙に。 2区は多数決で打越明司氏を「県連推薦候補者」に。 5区の米正剛氏の申請は「不受理」 15日 自民党本部が2次公認で、2区で園田修光氏、5区は「刺客」として米氏を公認。 県連との判断がねじれる。 16日 共産党県委が2、3区で候補擁立見送りを決定。 47年ぶりに候補の空白区が 18日 浜田氏が民主党に公認申請。 社民に離党届 民主党県連は5区の擁立を断念 21日 徳田毅氏が無所属で出馬決定。 民主が推薦 23日 民主党・岡田克也代表が遊説 24日 宮路和明氏が比例重複を辞退。 松下忠洋氏陣営の切り崩し阻止を理由に 25日 公明党・神崎武法代表が遊説 30日 衆院選公示 9月2日 小泉純一郎首相遊説が`14|接近でキャンセルに 5~6日 台風災害で垂水市で死者5人 10日 社民党・福島瑞穂党首が遊説 11日 投票日 9月12日朝刊(毎日新聞) -