◇「被災経験伝えたい」−−西条・浦山地区の法橋さん、恐怖つづる日記、hpで公開 高くそびえる石鎚に――。 今月1日、再開した西条市立浦山小(同市黒瀬)の講堂に3児童の歌声が響いた。 校歌を歌ったのは法橋智慧(ほうはしちえ)さん(10)、真観(まなみ)さん(8)、恵果(けいか)さん(7)の3姉妹だ。 昨年9月29日の`21|で、西条市中心部から南西へ約8キロの山あいにある浦山地区で大規模な土砂崩れが発生。 法橋さんの自宅は被災を免れたが、道路が崩れて集落全体が孤立。 3姉妹は父公彦さん(38)、母弥生さん(34)と市中心部へ避難した。 今年8月、道が何とか通れるようになり、学校の再開が決まった。 一家は約11カ月ぶりに自宅に戻った。 智慧さんらは「虫や花がいっぱいやけん、浦山が好き」と駆け回っている。 ◇ 同市の海岸近くに住んでいた法橋さん一家が浦山地区に引っ越したのは03年の夏。 その年の春、弥生さんがドライブ中に、浦山小と空き家を見つけた。 法橋さん一家は豊かな自然にほれ込み、山で暮らすことにした。 人口約20人の浦山地区は最高の環境だった。 昼間は虫取りや草花を摘んで遊べる。 夜は満天の星空の下、家族そろって大音量で音楽を楽しめる。 車を使えば片道30分で買い物もできる。 昨年9月29日。 自然が突然牙をむいた。 弥生さんは、この日以降に起こった出来事を日記につづり、インターネットのホームページ(hp)「アライグマの『山歩きの部屋』仮設事務所」(http://www.geocities.jp/urayamaaraiguma/)で公開している。 公彦さんがデジタルカメラで撮影した写真も載せた。 「3人の子どもたちや、将来『被災者』になる人のために、経験を伝えたい」という思いからだ。 日記で災害の恐怖をありのままに語った。 「9月29日 ごおごおと谷の荒れ狂う音と降り止まない雨、目の前の土砂崩れに足がすくみました」 「9月30日 この地区に入る道路で、最初のヘアピンカーブは流されたのか、無くなってしまっていた」 3姉妹はヘリコプターで、公彦さんと弥生さんはペットの犬、猫、鶏を連れ、歩いて山を降りた。 着の身着のままで、市内中心部の借家に転がり込んだ。 必要最低限の日用品の確保にさえ苦労。 行政の対応の鈍さに怒りやいらだちも募った。 ◇ 災害から1年。 法橋さん一家は徐々に日常を取り戻しつつある。 当面の目標は自宅の庭に畑を作って、お茶を栽培することだ。 しかし山の斜面には倒木が残り、道路は工事中。 半数以上の住民が自宅に戻れていない。 今月4日の日記にこんな記述がある。 「帰りたいと思っている人たちが帰れるようになるまでは、浦山の復旧は終わりません」【高瀬浩平】 9月30日朝刊(毎日新聞) -