◇釣り人激減、浄水経費かさむ 昨年9月の`14|以降、椎葉村から宮崎市佐土原町に流れる一ツ瀬川の濁りが長期化した。 山が荒れているため森林の保水力が弱まり、上流で大規模な山腹崩壊が起きたことが主な原因とみられる。 県は「耳川や小丸川、大淀川水系綾北川では台風後1~2カ月で濁水が解消された」としているが、一ツ瀬川では半年以上たった5月まで続き、市町村をまたいでさまざまな被害が出た。 濁り長期化の影響と原因を探った。 【佐藤恵二】 ◆上流域 西米良村を流れる一ツ瀬川上流は有名なアユ釣りスポットだ。 毎年解禁日の6月1日には、村中心部の本流に数百人の釣り人が並ぶ。 ところが、今年は違った。 「朝9時に見たら3人しかいなかった」。 村産業建設課の白石幸喜主査は言う。 鑑札を販売する民宿経営、坂口徹さん(42)は「例年は土日になると釣り人で川がいっぱいになる。 今年は10分の1くらいしかいない」と困り顔だ。 アユの生育が遅れているのは、川の濁りによって餌になる川底のコケが育たなかったからだ。 台風以後、多くの崩壊個所で復旧工事があり、流れ込んだ土砂が川底を覆った。 主な工事が終わったこともあり、白石主査は「水量が増える7月には土砂が流され、アユも戻ってくるのでは」と期待している。 ◆ダム下流部 一ツ瀬ダム(西都市)を挟んだ下流部では、上流域より濁りが長引いた。 「冬を越しても茶色い水が流れていた。 こんなことは初めて」。 西都市杉安地区に40年以上住む女性(68)は言う。 一ツ瀬川から飲料水を取る宮崎市佐土原町の浄水場では、05年度の濁水処理費用が1億2800万円かかった。 04年度(1500万円)の8倍以上だ。 シジミやウナギなどの漁獲量も減少している。 県内の他の河川に比べて濁りが長期化した背景には、一ツ瀬ダムの水の濁りが解消されなかったことがある。 `14|で一ツ瀬ダムには21万トン以上もの土が流れ込んだ。 ダムを管理する九州電力は「想定以上の大量の土が流れ込み、通常の濁水対策では効果が上がらなかった」と言う。 従来の対策は「選択取水」。 ダム堤の上部と下部に取水口がそれぞれあり、ダムが濁ったら、最初は沈んだ土を早く流すために下部から取水。 表面がきれいな水になった段階で上部から取水し、下流にきれいな水を流す方法だ。 しかし、今回はダム全体が大量の土で濁ったため、選択取水の効果はなかった。 同ダムの総貯水容量は2億6131万立方メートルで、国内のアーチダムとしては第2位(日本ダム協会のホームページから)。 巨大であるために濁水が長期間たまる傾向がある。 更に冬になると、冷やされた表面の水が下に沈んで対流が起き、沈んだ土がかき回され、再び全体が濁った。 ◆対策 流域住民の「清流」への願いは強い。 濁りが最も長期化した西都市の杉安地区の女性は言う。 「昔は5月になると両岸でホタルがパッパッと点滅した。 『日向の嵐山』と言われ、屋形船を浮かべて楽しんだもの。 もう一度、きれいな川を見るのが願いです」。 5月下旬には、市民が濁り解消を求める約4300人分の署名を橋田和実市長に提出した。 今月12日、宮崎市議会の一般質問。 濁水問題に対して濁水対策推進協議会長の津村重光市長は「緊急な対策が必要な深刻な問題と思っている」と述べた。 しかし、市幹部は「短期間での改善は難しい」とも認める。 今年も台風シーズンはもうそこまで来ている。 6月19日朝刊 (毎日新聞) -