◇地震に不慣れ、深い傷 3月25日午前9時42分、最大震度6強の揺れが石川県の輪島市や穴水町を襲った能登半島地震。 「北陸は安全」といわれ、地震に不慣れだった地域が負った傷は深い。 滋賀県でも「琵琶湖西岸断層帯地震」が30年以内に最大9%の確率で発生するとされ、「対岸の火事」では済まされない現状がある。 発生当日から1週間、現地で取材して経験した事例から、湖国が抱える防災の課題を考える。 【蒔田備憲】 ◇「対岸の火事」で済まされぬ 市町、早急にリスト作成を 「仲間は大丈夫か。 連絡はついたのか」 地震当日、能登町に住む奥能登ろうあ協会の中谷勲さん(65)は、手話サークルのイベントに参加するため京都にいた。 自宅の被害がなかったことは確認できたが、午前中で切り上げて帰宅する間、不安が頭から離れなかった。 95年1月の阪神大震災や、兵庫県豊岡市を中心とした04年10月の`23|による水害で起きた問題を聞き及んでいたからだ。 いずれのケースでも、聴覚障害者の状況を把握できなかったために避難勧告や緊急通報が十分伝わらず、被災者が取り残される事態に陥った。 「聴覚障害者との連絡体制をしっかり準備してほしい」。 中谷さんらは能登半島地震の前から、行政側に要望を続けていたが、輪島市はマニュアルやルールを作っていなかった。 このため、市内に住む聴覚障害者169人のうち、避難先や被災状況が把握できず、直接本人と連絡をとるのに日数を要したケースが数十件あった。 「どういう流れで安否確認をするのか、民生委員らとどう協力するのか、を決めていなかった。 事前に準備をしていれば、支援体制もよりスムーズに進んだはず」と同課は悔いる。 聴覚障害者や一人暮らしの高齢者やなどの「災害時要援護者」の支援について、政府は06年3月、「避難支援ガイドライン」を発表。 「要援護者に関する情報を平時から収集し、具体的な避難支援計画を策定することが必要」と指針を示している。 滋賀県では、要援護者の安否確認を迅速に行えるよう、リストの作成を各市町に促してきた。 しかし今月までに準備を整えているのは、湖南市、虎姫町、甲良町の3市町。 このうち災害発生時の運用方法まで定めているのは虎姫町だけだ。 県内で最多の940人の聴覚障害者がいる大津市も「今後、計画していく」というが、見通しは立っていない。 こうした現状に、県ろうあ協会は、「協会員が自主的に安否確認をするよう準備を進めているが、被災者の支援をスムーズに進めるためにも、行政の協力は不可欠」と呼びかける。 ◇通報十分伝わらず−−メール配信システム設置も要望 協会は、聴覚障害者向けの緊急メール配信システムの設置についても要望している。 兵庫県などでは昨年1月から、あらかじめ携帯電話で登録すると、地震情報や市町レベルの避難勧告、避難場所が配信される「緊急時情報発信システム」の運用を開始しており、「給水時間に間に合わなかったり、どこに避難所があるのか分からないことにならないよう、早急に取り組んでほしい」と訴えている。 災害弱者に詳しい関西大学社会学部の松原一郎教授(社会福祉学)は「リスト作りは災害対策の第一歩」としたうえで、「大災害では行政も被災する。 役所だけでは守ることはできない。 当時者や支援者が普段から積極的にニーズを訴え、協力体制を整えることが必要だ」と話している。 (不定期掲載)4月14日朝刊