◇水害の危険察知、排水作業 余震の中、素早い決断 ◇茶畑さん、宮坂さんに感謝状−−志賀・笹波 能登半島地震の余震後に決壊した石川県志賀町笹波のため池「平田池」で、本震発生直後に危険を察知して排水作業を行い、下流の集落を水害から救った人がいた。 北陸農政局は15日、その決断をたたえ、笹波地区の茶畑勝朗区長(67)と、ため池管理者の宮坂政光さん(60)の2人に感謝状を送った。 地区の山側斜面に作られた平田池は、上池と下池の2層構造。 満水時には上下合わせて約2万2千トンの水をたたえる大規模なもの。 3月25日の本震で上下の池を隔てる幅約4メートルの堤防がかなり崩れ、翌朝の余震で決壊した。 本震直後、宮坂さんは大規模半壊となった自分の家もそのままにして、茶畑区長と堤防に上がった。 上池から下池に水が流入すれば、下池があふれ、山すその民家や棚田がすべて水浸しになる恐れがあった。 2人の頭には、約300メートル離れた別のため池が02年の`6|被害であふれ、集落8世帯が約2週間避難生活した経験が浮かんでいた。 「何とかしなくては」と、余震で足元の土砂が崩れる心配を振り払い、堤防をかけ上がった。 田植えを間近にした春先。 貴重な池の水をすべて流してしまうと、棚田に水が注げない可能性もある。 だが、集落の安全を最優先した2人は、下池の水をすべて流しておく決断をした。 翌朝の余震で、2人が予測した通り堤防は決壊。 上池から下池へと水があふれだしたが、先に水を抜いておいた下池がせき止め、事なきを得た。 茶畑区長らは「当たり前のことをしただけ」と語る。 しかし、2人の判断と機敏な行動があったため、集落は水害に遭うこともなく、すぐに復興に向け動き出すことができた。 現在の平田池は、水位を下げてはいるが、棚田などの水に利用できる状態。 稲刈りが終わる秋ごろ、水をすべて抜き、大規模な修復工事をする予定という。 【泉谷由梨子】 5月16日朝刊