◇高齢者「こんなの初めて」 16日午前に県北部を襲った「新潟県中越沖地震」では、飯綱町で震度6強を記録。 県内で重軽傷者23人、建物50棟が損壊するなどの被害をもたらした。 長野地方気象台によると、県内で震度6以上を観測したのは1941年以来のこと。 高齢の被災者は「揺れは04年の中越地震よりもひどかった。 80年生きてきたが、こんなことは初めてだ」と声を震わせた。 県危機管理局によると、飯山市照里の無職、峰村澄子さん(89)が自宅で転倒し右足の骨を折る重傷。 中野市江部のキノコ工場では、同市安源寺の従業員、丸山定子さん(52)が崩れたキノコ栽培用の容器に足を取られ転倒。 左足骨折の重傷を負った。 この地震での負傷者は、長野市、中野市、飯山市、飯綱町で計23人に上った。 住宅などの被害は飯綱町で13棟、小布施町18棟、長野市15棟、東御市3棟、上田市1棟など。 いずれも一部が損壊した程度でけが人はいなかった。 また民家の塀が倒れるなどの被害も相次いだ。 長野新幹線は地震直後に運転を見合わせたが、午前10時半ごろ運転を再開した。 飯山市や飯綱町では65戸で断水。 同日夕までに復旧した。 また長野市や栄村で道路の隆起や落石などが発生した。 県内で唯一、震度6強を記録した飯綱町。 長野地方気象台は「同町で揺れが大きいのは地盤が影響している可能性がある」としている。 【川崎桂吾】 ◇ネクタリン落下 ■小布施町 「草刈り機に乗っていると、突然、地面が波打った」。 玄関の壁と物置の一部にひびが入った小布施町山王島、農業、久保勇さん(63)は、地震発生時の衝撃のすごさをこう表現した。 「直後に今度は目の前のネクタリンの木が台風でも来たかのように横揺れし始めた」という。 【川口健史】 ◇落石で国道破壊 ■栄村 地震による落石で、栄村切明―和山間で通行止めになった国道405号。 大きい岩は幅4メートル、高さ2メートルほどあり、落ちた衝撃で路面にひび割れや陥没があるという。 現場を見た和山在住の同村議の相澤博文さん(60)は「大小二十数個の落石が道路に転がり、ひび割れや陥没があった」と話す。 相澤さんによると、岩は高さ約50メートルののり面から落ちたという。 相澤さんは「中越地震のような山鳴りはなかったが、揺れている時間は長く、横揺れも強かった」と話している。 県飯山建設事務所によると、現場は片側1車線の直線道路で04年の中越地震の際にものり面が崩れたという。 県は修復や防護ネット設置など復旧工事を行い、昨年10月に終了。 5月に通行再開になったばかりだった。 同事務所は「現地調査をして対応を考えたい」としている。 【藤原章博】……………………………………………………………………………………………………… ◇「中越」の比じゃない−−飯綱町ルポ ◆「先祖がかわいそう」 震度6強を記録した飯綱町芋川にある酒屋では酒瓶が約30本ほど倒れ、割れた瓶から漏れてきた酒のにおいが店内に広がった。 経営する相澤龍右さん(63)は「最初弱い横ゆれだったが、すぐに激しくなった。 『これは中越地震の比じゃない』とすぐに感じた。 冷蔵庫の扉まで開き、足の踏み場がなかった」と肩を落とした。 同町牟礼の牟礼神社では灯籠(とうろう)3基と墓石10基が倒れた。 墓の様子を見に来ていた同町牟礼の主婦、町田ふみよさん(88)は「灯籠が倒れ、墓の土台にもひびが入っている。 余震でさらに崩れるかもしれない。 先祖や眠っている主人がかわいそう」と声を詰まらせた。 地震発生当時、飯綱町役場には職員2人が働いていた。 高橋尚太さん(18)は「パソコンのディスプレーが前に倒れ、引き出しが飛び出した。 揺れている最中に停電となったが、非常電源に切り替え、復旧した」と話す。 役場には町民から被害状況などを問い合わせる電話が相次いだが、およそ30分後にはほぼすべての職員が集まり対応した。 【大平明日香】 ◆「外にいても怖い」 使用不能となった飯綱町三水庁舎(旧三水村役場)近くに住む主婦、塚田ていさん(78)の自宅も本棚やテレビが倒され、内部の壁がはがれ落ちるなど一部が壊れた。 塚田さんは「畑で草を刈っていたが、外にいても怖かった。 経験したことのない地震」とうつむきながら話した。 【小林悠太】 ◆「引き続き警戒」 飯綱町の被害(午後5時現在)は住宅一部損壊が9カ所、ブロック塀損壊が6カ所、道路の陥没・隆起が3カ所などとなっている。 同町寺村では水道管が破裂して30世帯が断水となったが、午後4時には復旧した。 福祉施設で調理中の女性職員(57)が軽いやけどを負った。 飯綱町役場は消防などとともに16日夜も警戒態勢を取り、17日には道路の修復作業などを行う予定。 遠山秀吉町長は「人的被害がほとんどなかったのが救い。 余震が心配されるが、引き続き警戒したい」と話している。 【大平明日香】 ◆支柱で役場助かる? 飯綱町芋川の同町役場三水庁舎は1923年に建てたもので、阪神大震災の後、倒壊対策で庁舎前面の6カ所に支柱を設置した。 産業建設課の高橋吉人さん(48)は「この支柱がなかったら倒れていたかもしれない」と振り返る。 近くに住む無職女性(73)は「散歩しようと思って外へ出たら揺れ出した。 めまいがしたようで、揺れた後もずっと揺れ続けているような感じだった」と話す。 【谷多由】7月17日朝刊