◇近隣に多くの独居老人世帯、不安の声が上がる 甲府市塩部の県営住宅団地で、1人暮らしの蘆沢マサ子さん(81)が絞殺された強盗殺人事件は4日、事件発覚から1週間を迎えた。 甲府署捜査本部は、部屋に土足の跡や玄関のドアをこじ開けた跡がないことから顔見知りか訪問者を装った犯行とみて調べる一方、物色の跡があり現金がすべて持ち去られていることから、物取りの線も捨て切れていない。 絞殺後に腹や首を刺すなど、奇妙な点も残る。 現場付近は独居老人世帯が多く、高齢者は不安の声を上げている。 【小林悠太、曹美河】 ◇「不思議な事件」 10月28日午後7時45分ごろ、同じ棟に住む男性(70)が倒れている蘆沢さんを窓越しに発見。 ひもで首を絞められたことによる窒息死だった。 遺体には、肩からひざまでタオルケットが丁寧に掛けられ、死後に刺されたとみられる小振りな刃物による傷が、首の後部や腹部などに数カ所あった。 現場はドアと窓がすべて施錠され、指紋をふき取った形跡はなかった。 部屋の鍵は、蘆沢さんが持ち歩いていた、えんじ色の手提げかばんに黒いひもで結びつけられていたが、引きちぎられていた。 絞殺時には幅3~4センチのひもが使用されたが、刃物とともに部屋から発見されておらず、持ち出された可能性が高い。 犯行状況から恨みなどの見方もあるが、捜査幹部は「不思議な事件」と首をかしげている。 ◇高齢独居が捜査の壁 蘆沢さんは2年前まで、甲府市の湯村温泉内にある旅館で仲居として勤務し、約150万円の退職金をもらっていた。 捜査本部の聞き取り捜査で、蘆沢さんから数万~数百万円を借りていた人が複数いるという話もあり、関連を調べている。 すべての部屋が物色されていたが、和室の居間が特に激しかった。 荒らし方から、捜査幹部は「プロの手口ではない」とみている。 死亡推定時刻は26日午後~28日夕方。 近所の女性(81)は「蘆沢さんに最後に会ったのは26日午前11時ごろ」と話し、捜査本部は犯行時刻の特定を急いでいるが、1人暮らしだったため困難を極めている。 捜査本部は、`20|の接近で外出者が少なかった10月27日夕方以降に殺された可能性もあるとみて、蘆沢さんの交友関係や出入り業者を調べている。 ◇事件の暗い影 蘆沢さんは、子どもがおらず夫和男さんと死別後は1人暮らし。 団地では、高齢者の交遊グループに約10年前に入会して月2回、歌などを楽しんでいた。 同会の女性(74)は「よくおしゃべりする、気さくな人。 恨まれるような人ではない」とうなだれる。 一方、蘆沢さんが住んでいた「塩部第二団地」1号棟は、3分の1以上が独居老人世帯。 この女性も1人暮らしで、「以前は鍵を一つしかかけてなかったが、事件後は二つかけている。 怖くて仕方がない」と話すなど、事件の暗い影は多くの高齢者の日常生活にも及んでいる。 ◇「一刻も早い解決を」 葬儀は5日正午、蘆沢さんの夫の弟・蘆沢幸男さんを喪主に、甲府市元紺屋町の妙遠寺で営まれる。 最後に蘆沢さんと会ったのは10年以上前という幸男さんは「一刻も早い事件の解決を」と語気を強めた。 捜査本部は、現場周辺の鑑識捜査や住民への聞き込みを中心に行っているが、犯人逮捕に結びつく遺留品など手掛かりは見つかっていない。 県内では今年初めての殺人事件で、捜査幹部は「犯人を絶対捕まえる」と120人態勢で捜査に臨んでいる。 蘆沢さんは、同寺にある夫が眠る同じ墓に埋葬される。 ◇特異行動は単独犯−−犯罪心理学が専門の桐生正幸・関西国際大教授 60歳以上の女性被害者の場合、加害者は「顔見知り」が9割近くに上る。 不意を突いて殺害後、刃物を使用するような特異行動を取るタイプは単独犯であり、事件の発覚を遅らせる偽装工作も万全ではないといった特徴がある。 11月5日朝刊