川崎市営桜川球場(川崎区桜本)で先月末、ちょっと変わった始球式があった。 `20|の影響で試合が中止となり、球場脇に陳列された旧市電の中で、急きょ式は行われた。 投手は阿部孝夫川崎市長(64)、打者は友好都市の北海道中標津町の西澤雄一町長(65)。 市長が「こうやって投げるつもりだったのに残念」と振りかぶると、町長は「こう打つつもりだったのに」とフルスイングのまね。 「エアギター」(ギターの弾きまね)ならぬ「エア始球式」に、選手たちは爆笑したという。 川崎市と中標津町の軟式野球チームの交流は99年に始まり、一昨年から60歳以上の選手で親善還暦野球大会を交互開催、今回が3回目だった。 「始球式」は、台風のなか中標津町から1人約7万円の旅費を自己負担してやって来た侍スピリッツの選手22人をもてなそうと、川崎側がひねり出した知恵だった。 毎日新聞川崎支局が大会を後援した縁で、私もその夜、懇親会に参加させていただいた。 勢ぞろいした選手100人は、定年退職して無職の人もいれば、建築士、獣医師、商店主、大学講師、弁護士もいて職業も立場もさまざま。 懇親会に特別な趣向はなく、全員がひとことずつ自己紹介していくだけなのだが、その明るさと緩急を心得たあいさつの巧みさには驚かされた。 野球への思いから、選手同士のハゲ比べ、「川崎へ来るたび歓楽街をぶらつくのが楽しみ」といった話まで、聞く者を飽きさせない。 腹が出ている人もほとんどおらず、野球帽を取らなければ、みなさん10歳は若く見えた。 受け入れ側の窓口となった川崎ウエーブ代表の大森正勝さん(63)は「最近は勝負以上に、こんなに健康でやっているぞと見せ合うことに主眼が移ってきた感じ」と笑う。 神奈川県では今年、還暦・古希の野球チームが大活躍した。 全日本選抜還暦野球大会で横浜港南クラブが優勝、全日本古希軟式野球大会で神奈川かもめが3位、全日本還暦軟式野球選手権大会で湘南ドリームズがベスト8入りした。 若いうちでないと体がつらいサッカーや、個人プレーでカネがかかるゴルフと違って、野球は気軽に参加でき、年をとっても続けられ、仲間ができる。 野球の効用は侮れない。 週末は久しぶりにバッティングセンターに行ってみようか。 × × × 10月1日付で政治部官邸キャップから川崎支局長に着任しました。 よろしくお願いします。 11月26日朝刊