インドの大手財閥、タタグループ傘下のタタ自動車が、今夏にもインド企業として初めて東京証券取引所に上場することが2日、分かった。 上場するのは昨年11月に解禁された株式とほぼ同じ機能を持つ日本預託証券(jdr)で、実現すれば第1号となる。 今後、東証や金融庁などと詰めの作業に入る。 タタグループは積極的なm a(合併・買収)で事業分野や規模拡大を進めている。 傘下のインド最大手のタタ自動車は、約27万円の超低価格自動車「ナノ」を今秋に発売するほか、先月末に米フォード・モーター傘下の英高級車ブランド「ジャガー」と「ランドローバー」の買収で合意。 世界的な知名度が高まっている。 すでに米国市場で米国預託証券(adr)を上場しており、日本上場でも手続きを含め問題点は少ないとみられる。 jdrは、海外企業が発行した株式を基に信託銀行などが発行する有価証券で、adrの日本版。 自国の規制で、直接、海外市場に株式を上場できない企業が活用し、投資家は株式と同様に取引できる。 東証にはピーク時の1991年に127社の海外企業が上場していたが、メリットがないなどの理由で現在は25社まで減少。 このため、急成長するアジア企業の誘致活動を展開し、昨年、初めて中国本土企業の上場を果たした。 インドについても、昨年夏に、甘利明経済産業相が率いてインドを訪問した官民ミッションで、jdrを活用した上場を呼びかけていた。 ◇ ■矢継ぎ早 グローバルプレーヤーとしての存在感を強めるインド財閥のタタグループ。 東証への上場も、新たなm a資金を調達し、勢力拡大をさらに加速するのが狙いとみられ、買収の矛先が日本企業に向けられる可能性もありそうだ。 「インド企業が、そのうち世界を凌駕(りょうが)するかもしれない。 日本企業が買収のターゲットになるのは必至で、日本のトップメーカーを追い抜く日も近い」 日本政府関係者はインド企業への危機感を募らせる。 なかでも、タタの躍進は際立っている。 今年1月に超低価格車の「ナノ」を発表。 「ジャガー」と「ランドローバー」の買収には約23億ドル(約2300億円)を投じる。 そして、今夏の東証上場と矢継ぎ早だ。 タタ自動車を中核企業の一つとするタタグループは、27社の上場企業を含む約100社で構成され、06年度の売上高はインドの国内総生産(gdp)の約3%に相当する288億ドル(約2兆8800億円)。 従業員は約28万9500人に上る。 タタ自動車が04年に韓国の大宇の商用車事業を傘下に収めたほか、グループ企業もオーストラリアのホテルや英国の化学会社などを次々と買収してきた。 ■アジア照準? なかでも、タタの名を知らしめたのが、07年のグループのタタスチールによる英鉄鋼大手コーラスの買収だ。 インド企業によるm aでは過去最高の約62億ポンド(約1兆2500億円)を投入。 世界53位のタタスチールが9位のコーラスを飲み込み、粗鋼生産能力2700万トンの5位(当時)に躍り出た。 市場では、タタが東証上場を機に日本でもm aを仕掛けるとの警戒感が強まっている。 「日本市場の攻略ではなく、アジアなどにグローバル展開している企業を買収し、販売網や拠点網を拡大しようとしているのでは」 市場関係者は、タタの狙いをこう解説する。 国内のm aの新たな台風の目となるのか。 その一挙手一投足に注目が集まっている。 (坂本一之) ◇ 【用語解説】日本預託証券(jdr) drはディポジタリーレシートの略。 株式と同様の機能を持ち、信託銀行が対象となる海外企業の本国の株式を裏付けに発行するもので、その日本版がidr。 国内株式と同様に、その国の通貨で取引できる。 中国やインド企業は自国の規制で海外市場に上場できないケースがあり、drを活用し欧米市場に上場している。 2006年の全世界のdr取引額は前年比58・4%増の1兆6570億ドルで、ここ数年は2けたの伸びが続いている。