本番4日前、公演中止を決めました。 高知城を舞台にした初めての公演です。 昨年10月、`15|が近づいていたのです。 「設営ができないと公演は無理」。 高知演劇ネットワーク・演会で制作を担当する岡村実記さん(33)らは舞台資材の搬入を断りました。 前売り分は払い戻ししなくてはなりません。 ところが、直後に台風は勢力を弱めます。 「やっぱりやろう」。 改めて搬入するよう頭を下げました。 高知城公演は、結婚式を挙げるニュースを見たのがきっかけです。 「お城って借りられるんじゃない」。 演会代表の西村和洋さん(38)の思い付きでした。 二の丸へ行くと、予想以上に静かで舞台としてぴったりです。 窓口だった県教委文化財課に尋ねると、okが出ました。 料金も1週間でわずか7万円。 やるしかありません。 演会は01年1月、高知市内の若手の7劇団が集まり、結成されました(現在は9劇団)。 団員は約60人で、20~30代が中心です。 仕事帰りにけいこに励みます。 一人のプロの演出家との出会いが彼らを変えました。 現在は出身地、鳥取市で「鳥の劇場」を主宰する中島諒人(なかしままこと)さんです。 05年9月に県立美術館の中庭で「ヘッダ・ガブラー」(イプセン作)を上演しました。 深夜に及ぶけいこ中、納得のいかない演技にイスが飛び、中庭の水の中に入って詰め寄ることもありました。 岡村さんは「恐ろしい目つきで役者はにらまれていました」と振り返ります。 演出2作目の「誤解」(カミュ作)を静岡で上演する際、中島さんが岡村さんに漏らしました。 「成長したね。 役者らしくなってきた」。 06年10月、演会の4人は第13回beseto演劇祭に日本代表として招かれ、ソウルで同作を披露しました。 演会をサポートしてきた県立美術館の藤田直義館長(53)は客席で見て「堂々とした演技でした」と目を細めます。 高知城公演は昨年10月に4日間行いました。 姫路城を舞台にした泉鏡花の「天守物語」です。 演出はソウルで役者を務めた藤岡武洋さん(28)。 標高約40メートルの二の丸は、周囲270メートル、4128平方メートルという“大劇場 です。 芝居小屋と違い距離感がつかめず、事前にけいこもできません。 今年も29日~11月2日の5日間、高知城で「天守物語」を上演します。 今は最後の追い込み中です。 会社勤めの藤岡さんは残業を終え、午後7時過ぎにけいこ場へ。 今回のスパーバイザーも務める中島さんの教えを心掛けています。 「セリフの言い方を考えるのではなく、身体から生まれる言葉をセリフにしなさい」 演劇の魅力について藤岡さんは「人も場所も時間も情熱もお金も必要で面倒です。 しかし、そこから生まれるエネルギーは絶対に人を元気にします」。 公演は小雨決行です。 岡村さんは心の中に照る照る坊主を作り、天に祈っています。 【高知支局長・大澤重人】 ◆ ◆ ◆ 一般2500(前売り2000)円、高校生以下1500(同1000)円。 香南市・弁天座(11月15日)、梼原町・ゆすはら座(12月7日)でも上演。 問い合わせは090・7625・9674。 10月6日朝刊