晩秋の日差しが林の底まで降り注ぐ。 光の源を目指すように樹齢80年の杉とヒノキが真っすぐに伸びる。 「年輪が偏っている。 長いこと手入れをしてもらっていなかったのだね」。 錦川の支流・本郷川沿いの岩国市本郷町。 同市美川町の指導林業士、数井虎夫さん(73)は、この春間伐した切り株を指し、つぶやいた。 錦川上流の同市錦町生まれ。 「父親と炭焼きしながら育った。 山が好きでね」。 だが、牙をむく山も知っている。 1951年10月。 戦時中に荒廃した森林は、戦後復興に伴う木材需要の急増で切り尽くされていた。 そこにルース台風が襲来し、故郷では至る所で山津波が起き、警察予備隊(現在の自衛隊)が初めて災害派遣された。 町役場を退職した94年、優良材生産の研究会を始め、04年に仲間13人で「錦川間伐実践隊」を作った。 県農林事務所と協力、放置された森林を間伐しモデル林造りに精を出す。 かつて錦川では切り出した木材をいかだに組み、川下へ運んだ。 昭和20年代に姿を消したが、数井さんらは「山に生きた人々の姿を子どもたちに伝えたい」と、04年に復活させた。 「しっかり根を張った木々が山を守り、山が人を生かす。 その担い手が続いてくれれば」【大山典男】 〔山口東版〕 12月6日朝刊