◇活性化へ県の援助、鍵 「シカの食害で見苦しい場所もあり、限界集落で管理の難しさを痛感しました。 ありのままを見てほしいと開催に踏み切りました」。 京都府境の豊岡市但東町奥赤地区で先月末開かれたアジサイ祭りの案内状は、過疎地域の住民の苦悩を映す。 05年に合併で誕生した豊岡市は、面積697平方キロと県内最大。 人口はこの4年間で約3000人も減り、65歳以上が住民の過半数を占める“限界集落 11カ所を抱える過疎最前線の自治体だ。 基幹産業は農業だが、388ヘクタールもの耕作放棄地(05年調べ)がある。 その最大の原因となっているのが獣害だ。 県内のシカによる農林業被害は3億6000万円(06年)と北海道、長野県に次ぐワースト3。 今年は特にひどく、ブルーベリーが食い荒らされて観光農園が開園できなかったり、市天然記念物のハナミョウガが全滅するなど、人々の暮らしを直撃している。 奥赤地区は17世帯31人の住民のうち24人が65歳以上。 04年の`23|による土石流で住宅2棟が倒壊、農地の約8割が埋まる大きな被害を受けたが、泥に沈んだ地区を片付け、翌年もアジサイ祭りは開いた。 住民は話す。 「いつか息子たちが帰ってきて昔のにぎわいが戻ると信じている。 奥赤のシンボルの青いアジサイを絶やすわけにはいかない。 獣害には負けられない」 県農林動物研究センターの調査(07年)では、農業集落1429カ所のうち564カ所が「シカ被害が増えた」と回答。 県は今年3月、被害軽減に向けて年間2万頭のシカ捕獲を決め、但馬県民局は狩猟者の育成スクールを開くなど駆除に力を入れている。 だが、住民は言う。 「人間を恐れなくなったシカは毎晩、何頭も集まって村の中でお祭り騒ぎしている。 このままでは人間が追い出されてしまう」 ◇ 県によると、奥赤地区のように65歳以上の住民が40%以上で、50世帯以下の小規模集落は、但馬や西播磨、淡路などに247(昨年10月)。 県は08年度、「小規模集落元気作戦」と銘打って都市住民との交流をサポートし始め、26の小規模集落が参加している。 豊岡市但東町薬王寺地区は今年4月現在、134人が住み65歳以上は47%だ。 芦屋市の市民団体「tioクラブ」と交流を始め、4月には毎年恒例の花見に招いた。 芦屋の団体は楽器演奏などを披露し「例年は酒と料理だけだが、今年はにぎやかだった」と森弘之区長(62)。 野菜販売や、荒れた水田を使ってもらったり、泊まりがけで遊びに来てもらったりと、今後の展開に夢も広がる。 森区長は「年寄りばかりでこのままでは住む人もいなくなる。 だから街の人の力を借りたい。 将来何とかなるかな、という思いはしてきた」と手応えを感じている。 tioクラブの西本佳子代表も「地元の人や自然に接して、都会の人も元気をもらえる」と話す。 交流はまだ始まったばかり。 薬王寺では毎月1回会合を持ち、今後の展開を検討している。 森区長は「ちょっとずつでも交流が進めば、元気が出る」と話す。 いかに地元の要望に応えながら、実りある息長い交流をサポートしていくか。 限界集落の活性化に向けて、県の力量が問われている。 【皆木成実、川口裕之】=つづく 〔神戸版〕 7月4日朝刊 【関連ニュース】