◇「継続」望む声高まる 前原誠司・国土交通相が今月9日、全国の48ダム事業を一時凍結する方針を表明し、波紋が広がっている。 富山県南砺市では、建設中の利賀(とが)ダムが「凍結」となり、地元から事業継続を求める声が強まっている。 なぜダムを望むのか。 地元を歩き、関係者の声を聞いた。 【岩嶋悟】 ◇「洪水対策」必要性アピール−−道路整備への期待も ◆利賀ダムとは 富山県西部の砺波平野を流れる庄川。 その支流である利賀川上流の山間部に、洪水調整と工業用水の供給を目的に計画されたのが利賀ダムだ。 1993(平成5)年に着工。 当初は08年に完成予定だったが、工事用道路のルート見直しなどで工事が遅れ、総事業費は当初の900億円から250億円増の約1150億円に膨らんだ。 また完成予定も22年度にずれ込んだ。 昨年度までの工事の進ちょく率は26・6%(事業費ベース)。 今年度末には進ちょく率28・5%となる予定だった。 現在は工事用道路の建設が進められているが、ダム本体はまだ未着工のままだ。 ◆地元住民の思いは ダムの建設予定地は、富山市内から車で1時間半ほどの南砺市利賀村の山あいにある。 ここは04年の合併まで、人口約900人ほどの「旧利賀村」の一部だった。 建設に伴い移転を強いられたのは3世帯。 地元では大きな反対運動もなく、計画は順調に進んできた。 旧利賀村地域の「利賀地域自治振興会」の古野宏会長は「庄川流域は長年、水害に悩まされてきた。 ダムができれば水害を食い止めることができる」と歓迎する。 同時に、ダム建設に伴う道路整備にも大きな期待を寄せている。 車で旧利賀村から南砺市の市街地に出るには、急カーブが連続し、対向車とのすれ違いもままならない山道を30分以上も走らなければならない。 しかし、ダム本体に先駆けて建設中の工事用道路は、ダム完成後は国道となる。 新しい道を利用すれば、市街地への所要時間は約15分短縮される。 古野会長は「道路の完成は利賀村にとって画期的なこと」としたうえで「ダムを望む地元の声も聞いてほしい」と訴える。 ◆地元有力者は 先月25日、同県砺波市内のホテルで「利賀ダム建設促進期成同盟会」の総会が開かれた。 国会議員や県議、利賀川、庄川流域の5市長らが顔をそろえた。 出席者は04年の`23|による被害や、昨年7月の集中豪雨による被害を例に挙げ、ダムの必要性を強調。 本体の早期着工を決議した。 同会会長の綿貫民輔・国民新党最高顧問は「マニフェストに書いてあるから一歩も譲らないというのは乱暴な政治ではないか」と民主党をけん制した。 しかし前原国交相は9日、利賀ダムを含む48のダム事業の凍結方針を発表。 地元に衝撃が走った。 田中幹夫・南砺市長は同日、「すべてのダムが建設中止されるのではなく、現地調査に時間を費やすと思う。 今後も洪水対策としてのダムの必要性をアピールし続ける」と述べ、将来の「事業再開」に望みをつないだ。 前原国交相はダム建設中止の明確な基準は示していない。 また利賀ダムに関しては「一時凍結」以外は方針を示していない。 今後、現地調査や住民対話などの機会が設けられるのか。 地元は国の動きを注視し続けることになる。 10月12日朝刊 【関連ニュース】